第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
おまけにそれが間接的にとは言え、妻の命を奪うことにもなった。
なんて俺の人生、いきあたりばったりの破れ風呂敷なんだ…
それに比べたら、あいつらはちゃんと先のことまで考えて、見通してる。
そして、男同士とは言え真剣に愛し合ってる。
「なんにも…反対する要素がねえ…」
ぐうの音も出ないとはこのことだ。
俺にできることは、若夫婦(?)に身代をそっくり渡してやって、やることに文句も言わず、ただただちびどもの将来のための貯蓄を増やすこと。
雅紀にも将来結婚して独立した時のために、幾ばくかの金を包めるほど遺してやること。
まあ、これは俺の両親の生命保険の金があるから大丈夫だろう。
「まだまだだなあ…オイ…」
なあ萌香よ…
俺たちの蒔いた種は、どこまでも飛んでって…
「いつ芽吹くのかねぇ…俺は、それを見届けることができるのかねぇ…」
なんにもなかったあけぼの荘に…
まさかこんな色とりどりの花の種を蒔くことになるとはな。
萌香が死んで、寂しさがないわけじゃない。
頼れる親たちも遠に亡く、一人で4人の息子たちの将来を背負った形になって、途方にも暮れた。
そんな中、翔も雅紀も…
俺の知らないうちに大人になりやがってなあ…
「そら、年も取るわけだ…」