第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
それから、午前中いっぱい翔と話した。
大野との出会いや、大野自身の事。
それから、翔の考えていることや、これからのこと。
「誰にでも理解してもらえるような関係じゃないのはわかってる。だから、お父さんが出てけというなら、二人で出ていく覚悟はあるよ」
全部話し終わって、翔はそんなことを言った。
「俺自身の身体のこともある。この先、この体がどこまで保つかもわからないし…だから、俺…後悔だけはしたくないんだ…」
「何を勝手なこと言ってるんだ」
きゅっと口を引き結んで、翔はまた俺をまっすぐ見た。
「安心しろ。俺はおまえたちを軽蔑なんかしないし、恥にも思わない」
「お父さん…」
「それに、な…ちびたちのことではおまえたちに凄く負担を掛けてしまっている。俺はおまえに偉そうに意見なんか言える立場じゃない」
「な…何言ってんだよ!お母さんがあんなことになって、実の弟たちの面倒みるのなんて、当たり前じゃないか!」
「だから…そういう翔や雅紀の真面目なところや優しい所に俺は、浸け込んでるんだ」
「な、何言ってんだよっ!」
いきなり翔はちゃぶ台に拳を叩きつけた。
「家族なら、当たり前だろ!?」