第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
死にゃしないだろう…
俺の拳を何だと思っているんだ。
「お父さんは顔面凶器なんだから…」
「オイ」
「あ、ごめん」
ふぅっと息を吐き出すと、クタクタと翔は床に倒れ込んだ。
「お、オイっ…翔!?」
「ごめん…本当はちゃんと俺たち二人揃って報告しようと思ってたんだ…でも、言い出せなくて…」
「そんなことはいい!具合、悪いのか?!」
「大丈夫。…お父さんはそんな人じゃないってわかってたんだけど…やっぱり俺たち男同士だし…」
「翔…」
「最悪…勘当されるかなって…」
「そんなことするわけねえだろ…おまえは俺の長男じゃねえか…」
「でもさ…俺、多分…」
「ん…?」
「大野さんと…一生、一緒にいることになると思う…それでも許してくれる…?」
寝転がりながら、翔はまっすぐに俺を見上げてきた。
「理屈じゃわかってもらえても…どうしても本能的に駄目ってこともあるのは…俺、よくわかるから。だから…無理しないでもいい」
あんまりまっすぐに見上げてくるから、俺も正直に腹を割らないといけないと思った。
「…その…」
「ん?」
翔は体を起こして、俺の前に正座した。
「なんでも、聞いて?」
「ああ…」