第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
絆創膏を貼りながらも、まだ焦ってる。
「へ、変なこと言わないでよね」
「変なことでもないだろう…つきあってるんだろう?」
「う…」
真っ赤になって俯いてしまった。
「…大野は、おまえの病気のこと、知ってるのか?」
「うん…大野さんがここにきた時、入院したから…知ってる」
「そうか…」
「ちゃんと…説明はしたよ…?」
恐る恐る、翔は視線を上げた。
「なんでわかったの…?」
萌香にそっくりだな…
ピンチになると、顔を真っ赤にして目が潤むんだよな。
「そんなもの、見ていればわかる」
「えっ…」
手を伸ばして、ぐしゃっと翔の頭を撫でた。
「…おまえが選んだんだ。俺は反対はしねえよ」
ポロリと、思ってもない言葉が出た。
「お父さん…」
でも、泣きそうになっている翔の顔を見たら、どうでもよくなった。
孫の顔が見れないのは残念だが、翔の身体のことを考えたら、端から期待はできなかった。
雅紀が居るし、それにちびたちが居るじゃないか。
「ただし、大野が翔を泣かせたら、俺がぶん殴るからな」
「や、やめてよ!お父さんが本気で殴ったら、大野さん死んじゃうよ!」