第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
ちびたちの寝顔を眺めながら、昼間みた光景を思い出した。
大野と翔がちびたちを抱っこしながら笑い合う風景。
しあわせな親子みたいな風景――
「あ…」
そうだ
何処かで見たことがあると思ったら、あれは…
翌朝、起きて居間に行くと、もう翔は身支度を済ませてエプロンを付けていた。
「あ、お父さんおはよう」
「おお…」
雅紀と大野は居ないようだった。
「あいつらは?」
「もうとっくに起きて漁に出てったよ?」
「ああ…そうか…」
「朝食用意するね。今日は大野さんが作ってくれたんだよ」
「えっ…」
翔が飯を用意してくれて、ひとりでもそもそと食べた。
その間翔は、ちびどもを叩き起こして、幼稚園に送り出す準備をするようだ。
「ほら、顔洗って!」
「ねみゅい~…」
「うにゃ~…」
久しぶりの朝の騒音を聞きながら、テーブルに乗った飯を眺める。
俺の好きなポークのスパムの卵焼きが作ってあった。
「チっ…こんなので絆されるかよ…」
ポイッと口に放り込んだ。
「ん…?」
懐かしい味がした。
萌香が作ってくれた卵焼きに味がそっくりだった。
「…ふん…」
ずずずと味噌汁をすすり込む。
「絆されてなんかねーぞ…」