第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
しかし、そうですかと納得できるような問題じゃない。
大切に育ててきた息子が…まさか男と付き合ってるなんて。
ショックを受けたまま、ちびたちの眠る客室に戻った。
「なあ…萌香…一体どうしちまったんだろうな…翔は…」
ちびたちは健やかな寝息を立てて熟睡している。
豆電球の明かりの中、俺は思考がまとまらなくてもやもやしたまま横になった。
身内に同性愛者なんかいない。
…いや、もしかして言い出せないだけで、本当は居るのかもしれない。
いや…血筋の問題じゃないんだろう…
昔、翔はつきあってるという女の子を家に連れてきたことがあった。
無理してつきあってる風でもなかったから、根っから同性愛者ってこともないんだろう。
「いやぁ…いやぁ…」
眠れなくてごろりと天井を仰ぐ。
「なんで…こんなことに…」
もしかして翔の罹ってる病気のせいか…?
いや、そしたら大野はどうなんだ。
あいつは根っからの同性愛者なのか。
よりによってなんで翔を選んだんだ。
何で俺の息子を…
「とうちゃぁん…」
「とーちゃ…」
ちびたちが眠りながらゴロゴロとこちらに転がってきた。
二卵性双生児のくせに、動きがシンクロしている。