第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
なんだか気に入らねえ…
まるで翔が大野に惚れてるみたいじゃねえか。
あんな鼻の下伸ばして…
「翔は嫁にはやらんぞ!」
「は、はいいぃ!?」
酒も進んで、思わず心の声が漏れ出てしまった。
「すいませんっ…おとうさんっ!」
「ああん!?だから俺はおまえのような息子は作った覚えがない!」
「お、おとおとおとお父さんっ!何言ってんだよっ!」
翔が慌てて止めに入るが、雅紀はその後ろで爆笑している。
「…オイ…なんでそんなに大野をかばうんだ。翔」
「えっ!?だ、だって…」
「おまえ…大野とデキてるんじゃないだろうな!?」
「んぎゃーーー!何言ってんだよ!?」
いよいよ床にめり込むぐらい雅紀は突っ伏して爆笑している。
大野は酸素の足りない魚みたいに、口をパクパクさせている。
「いいかあ…?翔は大事に育てた俺の自慢の息子だ!手ぇだすんじゃねえぞ!?」
「おとおとおとおと…」
「酒ぇ!」
ぶんっとグラスを持った手を出しても、一向に誰も俺に酒を注がない。
雅紀は床で撃沈してるし、大野はまだぱくぱくしてるし、翔は顔を真赤にして頭を抱えている。
仕方ないから手酌して、ビールを注いだ。
「んも~うるちゃい…」
「とうちゃんの声大きいよお…」
ちびどもが起きてきて、俺によじ登ってきた。