第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
懐かしいこと言うじゃねえか…
あけぼの荘を作った時は、まだ俺の両親も健在で…
俺がいまの雅紀みたいに、宿の仕事と漁をやって。
たまに俺が長期の漁に出る時は、俺の親と萌香が力を合わせて頑張ってくれてた。
たまたま、雅紀が小さい頃は長期の漁が重なってあまり家に帰れてなかったから、漏らしたんだよな…俺の顔を見て。
「だからさ、お父さんの顔をちびたちが見ても怖がらないように、ちゃんとお父さんの写真とビデオ、見せてたんだよ」
「えっ…そうだったのか」
まさか翔が萌香のやってたこと引き継いでたなんて…
「そういうことだったのか…だからあんなに写真みせてたんだ」
「もお…大野さん忘れて」
雅紀がなさけなーい顔をして俯いた。
「なんか…そういう話、聞いたことなかったな…」
「え?そうだっけ?」
「聞きたい」
「智くん…」
大野がにっこり笑いながら翔を見つめると、翔は真っ赤になりながら見つめ返す。
おい…なんだそりゃあ…
「なら、俺が話してやる」
「えっ」
大野の胸倉を掴まえた。
「俺じゃ不満か?」
「いっ…いえっ…滅相もございませんっ…」
そのまま翔と雅紀に酒を出させて宴会を始めることにした。