第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
「えへへ~」
満足したのか、潤は翔にぎゅっと抱きついた。
和もそれを見て、大野にぎゅっと抱きついた。
大野と翔は、目を合わせてふふっと微笑んだ。
「…なんだありゃあ…」
まるで夫婦じゃねえか…
まるで親子じゃねえか…
そして、なんだかこの風景もデジャブだ。
何処で見たんだったか…
その後、賑やかなちびどもが中に入ってきたんだが、一向に俺の部屋には来なかった。
無理もないか…滅多に見かけないレアキャラだからな。
それに俺は大男で、所謂コワモテというやつだ。
きっと彼奴らには鬼のように見えていることだろう。
雅紀が小さい頃、帰ってきた俺を見て漏らしたことがあるくらいだ。
「しょうがない…」
俺の方から出向いてちびどもと交流を持つことにしよう。
萌香が生きている時は、俺のことを忘れないよう子供たちに言い聞かせてくれていたものだが…
息子たちにまでそれを求めるのは酷ってもんだろう。
「精々、俺が頑張るしかねえなあ…」
食堂の隣の、どたんばたんとうるさい部屋。
そこには居間がある。
居間と言っても、家族で飯を食うところでもあって、いろいろと兼ねている一間だ。
そこの襖を開けると、和と潤が着替えをしているところだった。