第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
窓から外を見ると、大野にちびどもがまとわりついているのが見えた。
「大野あんちゃん!父ちゃんが帰ってきたってほんと!?」
「智あんちゃん!とうちゃんどんな風だった!?」
「うっさいぞ!お前ら!歩け!中に入ったら居るだろうが!?」
頭に黒い帽子をかぶり、黄色い通園バッグを下げたちびどもは、大きくなっていた。
前に見た時はもっとちんまりしていたのに、子供の成長は早いものだ。
とは言ってもまだ幼稚園児だ。
ちんまいものはちんまい。
大野の両足に一匹ずつ掴まって歩行を邪魔しているが、なんとか大野は前に進んでいる。
「ぐぬぬ…」
ぶっと思わず噴き出してしまった。
あんなにあいつらが懐いているということは、悪いやつではないのだろう。
中から翔が出てきて、潤を抱え上げた。
「もう…智くん歩けないでしょう…」
「翔あんちゃん、ただいまぁ!」
「はい、おかえり。潤」
「翔あんちゃん俺もおお!」
大野に抱え上げられた和が翔に向かって手を伸ばす。
「はい、おかえり。和」
ちゅっと和のほっぺたにキスすると、潤が剥れた。
「なんでぇ!?和ばっかり!」
「はいはい。潤もね」
ちゅっと潤のほっぺたにキスしてやる。