第69章 海鳴り~父、あけぼの荘に帰還す。
「何か変わったことはあるか?」
雅紀に尋ねると、にやりと笑って翔の方を見る。
「言ったの?もう」
「ばっ…ばかっ!黙ってろ!」
「…なんのことだ?」
「なんでもないっ…」
翔は怒ったように食堂を飛び出していった。
「なんなんだあいつは…」
「ぶふぉっ…」
雅紀は笑いを堪えて苦しそうにしている。
「雅紀?」
「い…いや、なんでもない…ひぃ…」
こいつは一旦笑いだしたら暫く止まらないから放っておくしかない。
なんだか…今回の帰国はざわざわするな…
一体何だと言うんだ。
食堂を出て部屋に荷物を入れた。
夫婦で使っていた部屋は、相変わらず何も変わっていない。
ベッドにはシーツも布団もなかったから、布団部屋まで取りに行った。
「あ、お父さん、これ使って?」
翔と雅紀が追いかけてきて、新品の布団とシーツを持ってきてくれた。
「おお…豪勢じゃないか」
「うん。大野さんが入ってから、だいぶ手が回るようになったからね」
「そうか…」
なんとなく、大野のことを話しているときの翔にデジャブを感じる。
どこかで見た風景だ。
どこであったか。はて。
部屋に戻りベッドメイキングをしていると、なにやら外が騒がしい。