第8章 ヴィンテージ・ワインscene1.5
潤はもう扇風機の前には居ない。
バスローブを着てソファに座って、文庫本を広げていた。
「あっつー…」
呟いてキッチンに入った。
冷蔵庫からビールを取り出すと、リビングに戻った。
缶を開けながら扇風機の前に立つ。
グビリとビールを飲むと、爽快感が身体を駆け抜けた。
「うい~…」
「おっさんみたいな声出すなよ」
「もうおっさんだろ?」
「お前はな。俺まだお前の一個下だもん」
「うっせ。変わんねえっつうの…」
そのまま涼みながらビールを煽った。
一缶飲み終える頃には、汗は引いていた。
でも身体は火照る。
俺はそんなに酒に強くない。
でも、毎日飲んじゃうんだよなぁ…
「和也?明日の予定は?」
「えー…明日は…オフ」
「そっかぁ…俺も」
「えっ?嘘でしょ?」
「なあんでだよ…俺だって平日休み貰えんだぞ?」
「こんな予定ぎっちぎちなのに?」
「ああ…」
アリーナツアーの真っ最中。
一ヶ月空いたけど、もうすぐ再開だ。
それにドームツアーが決まっている。
その構成も潤は担当してる。
ずいぶん前から準備してるんだ。
この前の翔さん司会の音楽番組だって…
潤は演出に関わってたんだ。
なのに…こんな時期に平日オフ…?