第8章 ヴィンテージ・ワインscene1.5
「暑い…」
今年も扇風機が必要な季節になった。
例の思った角度に風がでない扇風機をリビングに出した。
軽く拭いて、コンセントを入れる。
電源ボタンを押すと、今年もあさっての方向に風が出てきた。
「相変わらずだな…おまえ…」
ぽんと頭を撫でて、俺は傍を離れた。
「あ、出したんだ」
潤が頭を拭きながらリビングに入ってきた。
「うん、今日暑いでしょ…」
「さんきゅ。早速使わせてもらうよ」
そう言うと、風呂あがりの潤はバスローブも着ないで扇風機の前に立った。
「…なんか着ろよ…」
「だって暑いんだもん…」
潤は自分の身体に自信を持ってる。
じゃなきゃ、あんなにやたらめったら脱がない。
ほんと…自信家なんだから…
俺はというと、いくら鍛えても筋肉の付かない身体に早いうちから見切りをつけてる。
だから、やたら肉体を晒すようなことはしない。
できるだけ布を纏うよう、努力している。
…だからこの前の映画は、すっごく嫌だった。
早々に諦めてるから、潤に対して羨望とか嫉妬とかはないけど、でもやっぱりこの不格好な身体はできるだけ見られたくはない。
潤の後に風呂に入った俺は、Tシャツにハーフパンツを履いてリビングに戻った。