第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-
”朽葉…朽葉…”
「なあに…?」
”なんでそんな名前にしたの?”
「だって…蒼乱さんだって、物騒な名前じゃん…」
”おまえに枯れた葉っぱなんて似合わねえよ”
「知らないの?朽葉色っていう色の名前があるの」
”そうなの?それって何色?”
「赤みがかったくすんだ黄色だよ。茶色のが近いかな」
”へえ…知らなかった”
「雅紀がさ、俺に黄色が似合うって言ったからだよ」
”そうだっけ?そんなこと言ったっけ?”
「言ったよお…まだ雅紀が常磐だった頃に…」
”そんな昔のことよく覚えてるなあ…”
「当たり前だよ。忘れないよ」
”でもなんで茶色に近い色にしたの?”
「だって…俺、雅紀みたいに綺麗じゃないもん」
”…馬鹿だなあ…”
「馬鹿だよ…どうせ…」
”こんなに綺麗なのに…”
”こんなに愛おしいのに…”
好きだよ――
和也…