第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-
昨日の朝…
起きると紫蘭も俺の腕の中で起きていて…
抱いてくれと泣いた
あいつを忘れるため、上書きしてくれと
「ごめん…」
「なんで…謝るの…?」
「朽葉…」
俺の腕の中で、何度も何度も紫蘭は果てた
そして最後の瞬間…
『雅紀が…好き…』
そう言いながら、気を失った
「紫蘭ちゃんに惚れちゃった…?」
「違う…」
「でも…ほっとけないんでしょう…?」
紫蘭に好きだと言われて、気づいた
俺は…俺の心のなかに居るのは…
「朽葉…」
ぎゅっと抱きしめると、少し身体を捩った。
「苦しい…雅紀…」
「朽葉…朽葉…」
「どうしたの…?雅紀…」
俺が抱きたいのは…朽葉だけなんだ
「雅紀…?」
俺の顔を覗き込む朽葉の頬を手で包んだ。
「キス…してもいい…?」
「え…?」
びっくりしたままの顔を引き寄せて、唇に吸い付く。
ぞくぞくと気持ちよさが背筋を這い上がる。
「ま、さき…」
ギュッと抱きしめた。
「ねえ、朽葉…」
「なに…?」
「俺を…自由にしてくれる…?」
見えなくなってたんだ。
とっくに商売はやめていたのに、どっぷり浸かりきってた俺は、嘘にまみれて嘘になっちまって…
でも…本当は、一個だけ嘘を付ききれてなかった。