第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-
何…言ってんだろ…
朽葉、何言ってんだろ…
頭がグラグラする。
まっすぐ立っていられない。
俺は何を言われたんだろう。
なんでこんなに足に力が入らないんだろう…
朽葉に言われたことが頭をぐるぐる回ってるのに、何一つ答えなんか出せなくて。
何一つ、物事をすすめることができなくて。
「雅紀…?大丈夫?気分が悪いの?」
紫蘭を病院に連れて行ってるのに、逆に俺が心配される有様で。
見慣れない格好をしてる紫蘭にはニット帽をかぶせてやって、なんとか普通の男に見える。
俺はというと顔を派手に腫らしていて、回りにいる診察待ちの人は、俺たちから離れて座って遠巻きに見てる。
幸い、ここは達也さんの息のかかった病院だから、大事にはならなかった。
でも俺の心は乱れたままで、どうしても医者の話も頭に入ってこなかった。
どうして朽葉はあんなこと言ったんだろ…
「また検査の結果を聞きに来てください」
紫蘭の診察の結果を聞いてる最中で、やっと意識が戻ってきた。
「わかりました。結果は本人じゃなくても聞けますか?」
「そうですね…でも結果によっては来ていただいたほうがいい場合もありますから…」