• テキストサイズ

ヘブンズシュガーⅡ【気象系BL小説】

第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-


その頃から…俺と朽葉の関係は始まった。


泣くんだ…

なんにも言わないで、俺の腕の中で…


慰め方なんて知らなかった俺は、朽葉を抱くしかなかった。
添い寝なんて、いろんな奴にしてたし、泣き出す奴だっていた。

だけど、朽葉はただ口を引き結んで…
黙って泣く。

何を呪うわけでもなく。
自分を可哀想がるわけでもなく。

ただ、抗えない自分の運命に唇を噛み締めてたんだ。

そのうち、朽葉が自分を嫌っていることも。
自分を好きになれず苦しんでることにも気づいて…

俺は、自分を見ているようで朽葉を突き放すことができなかった。


「もしもどうしても俺に外に出てほしいんなら…」

またぎゅっと袖で涙を拭くと、まっすぐに朽葉は俺を見た。

「雅紀と一緒に行く」
「朽葉…」
「俺は雅紀が好きだよ」

赤く潤んだ目が、必死で。
拒絶されたら、こいつ生きていけないんじゃないかって…

「自由にしてあげる」
「え…?」

乖離して行きそうだった意識が、凄い勢いで戻ってきた。

「雅紀を…俺が自由にしてあげる…だから、一緒に行こう?」
「朽葉…?」
「縛られてるのは、雅紀だよ。捨てられないのは雅紀だよ」
「何言ってんだよ…」

静かに俺に歩み寄ると、しっかりと俺の顔を両手で掴んだ。


「俺は、死なない。だから雅紀を自由にしてあげられる」


/ 1000ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp