第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-
おいらんになるのには、前職が引退しないことにはなれないのだから、タイミングもある。
だけど、本当にすんなりと朽葉のおいらんは決まったから、こういう運を持っている子もいるんだなあと凄く感心したものだ。
だから、借金も他のやつよりも早めになくなって。
蒼乱と朽葉が同時に居なくなるのは痛手だったが、それでも俺はそれをめでたいことだと思っていた。
でも…いつの間にか、朽葉の年季明けの話はなくなっていて。
後々、達也さんに聞かされるまでは詳しいことはわからなかった。
朽葉が口止めをしていたから。
蒼乱がせっかくの門出を迎えるのに、こんな話きかせたくないからって…黙ってたんだそうだ。
朽葉の親から、追加で借金を申し込まれたということだった。
それは最初ほど莫大な額ではなかったが、普通に暮らしていたら目玉の飛び出るような金額で。
結局、朽葉の年季は三年近く伸びることになったのだ。
その後も借金の申し込みはあったらしいが、達也さんの方で撥ねつけていた。
朽葉にはもうその話は聞かせなかったし、親とも連絡は取らせないようにした。
また自分でひっかぶるっていい出しかねなかったし…
多分、朽葉はそれもわかってたんだろう。