第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-
おかゆを食べて薬を飲むと、紫蘭は部屋を暗くした。
もう外は薄っすらと明るくなってる。
「眠れそう?」
「うん…多分…」
「寝れなかったら、俺も起きてるから…」
「はあ?おまえもだから怪我してんだから寝ろって…」
「だって、雅紀のほうが重傷だよ…?」
「見た目はな。おまえは心も傷ついてんだ。早く寝ろ」
「え…?」
またタオルを当てて氷嚢を乗っけると、紫蘭の手が伸びてきた。
「雅紀が寝るまで支えてる」
「いいって…」
「だって守ってくれたのに…このくらいさせて?」
また随分しおらしいことを言う。
これじゃあどうしても寝ないといけないじゃないか…
紫蘭に氷嚢を任せて目を閉じた。
いつの間にか寝てしまったみたいで、目が覚めたらもう外は明るくなっていた。
「ん…?」
なぜか俺の腕の中に紫蘭が眠ってる。
「なにやってんだおまえは…」
しっかりと俺の顔に氷嚢を載せながら、寝てしまったらしい。
出ている右腕がすっかり冷えていた。
「ばかだな…もう…」
手を取って布団の中に入れた。
しっかりと俺の身体で温めていると、紫蘭が目を覚ました。
「雅紀…」
「おう…目が覚めたか?身体、どうだ?」