第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-
「先に雅紀の診察行こう?」
「ああ…もう、わかったから寝ろって…」
タオルを左頬に載せて氷嚢を乗っけた。
手で支えないと落っこちる…
あー…こりゃ、熱も出てきたな。
あの野郎…おもっくそ蹴りやがったな…
「雅紀、俺が持ってるから…」
「いいって…寝てろ。おまえだって怪我してんだから…」
「でも…」
「いいから。そんな格好で起きてたら、風邪ひくだろ!」
いらついて、ちょっとキツイ口調になってしまった。
「いててて…」
ついでに口も開きすぎて痛い。
「ごめん…」
そう言うと立ち上がった。
「でも、鎮痛剤が部屋にあるから…取ってくるね?」
そう言ってそっと部屋を出ていった。
「あー…薬なら俺の部屋にも…」
あるんだけどな…聞いてやしねえ…
戻ってきた紫蘭は手に湿布やら薬のシートやらたくさん持っていた。
それから綿入れまで着込んで…どうやら俺の看病をするらしい…
「この薬、胃に悪いから、なんか作る…」
「いいってそんな…」
「すぐできるから…台所借りるね?」
食材まで持ってきてたから何も言えなかった。
すぐに紫蘭はおかゆみたいなのを作ってくれた。
部屋子が長かったから、器用なもんだ…