第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-
紫蘭の髪の毛を乾かし終わったら、そのまま奥の座敷に寝かせた。
「明日はちゃんと病院行って、しっかり休もうな?」
「わかった…」
スタンドライトの明かりを消すと、俺も布団に横になった。
「おやすみ、紫蘭」
「おやすみ…雅紀…」
朝方、痛みで目が覚めた。
左頬はマックスで腫れ上がってて、上手く左目も開けられない。
「いててて…」
思わずちょっと呻きながら起き上がった。
「雅紀…?」
「なんでもない。寝てろ」
居間に入って台所の襖を開けた。
「ねえ…雅紀、こっち向いて?」
紫蘭は後ろに着いてきてた。
「寝てろって…」
台所に入って冷蔵庫から氷を取り出した。
これは冷やしておかないとまずい…
氷嚢があったからそこに氷を入れて水を少し入れた。
振り返ると、まだ紫蘭は入り口に立っていた。
「雅紀…」
昨日の夜よりも、真っ青な顔をしてる。
「どうしようっ…凄い腫れてる…」
紫蘭の顔は口元が少し腫れているだけで。
見た目は俺のほうが重傷だな…
「大丈夫だって…」
乾いたタオルを取って、布団に戻る。
「おまえももうちょっと寝てろ?な?」
「どうしよう…雅紀…」
オロオロと俺の枕元に座り込んだ。