第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-
「ごめん…雅紀…」
「なんでおまえが謝ってんだよ…」
「だって…俺のせいで蹴られた…」
「大したことねえよ…」
紫蘭の頭にバスタオルを被せて、髪を拭いてやった。
「明日、病院行こうな…」
「えっ…いいよ…傷、大したことない…」
「いや、尻の傷甘く見るなよ?」
裂傷の酷いのはいつまで経っても治らない。
やっぱり医者に診てもらって、薬を出してもらわないことにはどうにもならないんだ。
「それに、病気の検査もしなきゃならねえ」
「え…?」
「ああいうのは、きっと他でも同じことしてる。念には念を入れておかないと、おまえが損するし客にも迷惑かけることになる」
「…そう、だね…わかった…」
しょんぼりと項垂れる紫蘭の頭をぽかりと叩いてやった。
「紫蘭は今まで運が良かったんだよ」
「…え…?」
「俺はね、現役の頃、ああいうのに何人も当たったよ」
「雅紀…」
「でも、その度に達也さんにきっちり話つけて、今みたいにちゃんとしてくれるようになったんだ」
「そうなんだ…」
紫蘭は感心したように俺を見上げた。
「だから、俺に感謝しろよ?」
「ふふ…うん。雅紀のお陰なんだね…」
「わかったら、髪乾かすぞ」
「うん…」