• テキストサイズ

ヘブンズシュガーⅡ【気象系BL小説】

第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-


正広さんは俺よりも先輩のお職だった。
俺と同じで、借金を返し終わってもここに残って働いている。
帰るところなんか、とっくになくなっているから。

借金を返し終わった頃…正広さんの家族は更に背負った借金で首が回らなくなって、一家心中してしまっていた。

途方にくれていた正広さんに、達也さんがここに残って働かないかと声を掛けたんだ。

今は達也さんが居ない時に、オーナーの代理みたいなことをしてる。
帳簿関係も正広さんが一手に引き受けてる形だ。

「こいつまーた朽葉と寝たらしいよ?」

くりっとした目をぎょろりと向けた。

若い頃は本当に女性と見まごうくらい可愛かったという話で。
俺がここに入った頃には可愛さは抜けて、本当に綺麗なおいらんだったけど。
今は四十路半ばで男臭さも出てきたし老けてきたけど、それでも同じ年の男に比べたらやはり華やいで見える。

「…雅紀…」
「店の子に手を出すなんて信用できるかって」
「まあ、正広…」

達也さんは窘めるように言うと、正広さんをのれんの奥に押しやった。

「雅紀、後で」
「…はい…」

俺の半襟に手を掛けると、少し笑って見せた。
しゅるりと襟に手を滑らせてのれんの奥に消えていった。

「参ったな…」

まさか、正広さんにまでバレてるとは…

最近、遣り手婆みたいになってきたもんな…
おっさん臭いというよりは、おばさんくさい。

「壁に耳あり、障子に目あり…」

もしかしてあんな小柄だから、押入れにでも入って見てたんだろうか…

「おおこわ…」

/ 1000ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp