第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-
あの蒼乱だって、おいらんになるのに行儀見習から五年掛かったのだから…
「そんな顔、するな…」
そんな自分を…朽葉は汚いと思ってる。
嫌なのに、本能が勝手に身体を動かす。
目線も、喘ぐ声も…
絶頂に絡んでくるその細い腕も…
朽葉は嫌いなんだ。
「おまえは綺麗だよ…朽葉…」
そう囁くと、朽葉は泣き出す。
定期的に朽葉が俺を求めるのは、多分これが欲しいから…
じゃないと…朽葉は生きていくことができないんだろう。
「綺麗だ…朽葉…」
白く細い体を撓らせて、朽葉は歓びを全身で表現する。
今、この瞬間は手練手管を忘れて…朽葉は快楽の淵に沈んでいく。
「あぁっ…雅紀もっとっ…奥っ…」
布団に四つん這いになりながら、俺をキツく咥え込む。
その背中を見つめながら、俺も朽葉の作り出す快楽の淵に沈み込んでいく。
「朽葉…朽葉…」
「あぁ…雅紀…嬉しい…」
子犬みたいに潤んだ目を俺に向けると、ぶるりと震えた。
「も、イっちゃうよぉっ…」
「ああ…いいよ…」
細い腰を掴むと、繋がったまま朽葉を仰向けにした。
ぎゅうっと抱きついてくると、俺も力いっぱい抱きしめた。
「あ…も、ダメぇっ…」
熱い迸りが俺たちの間に流れた。