第68章 傾城屋わたつみ楼-常磐色-
「おまえ…昨日、抱かれたんじゃないのかよ…」
「だって…雅紀は、ちが…う…もん…」
肌に触れた俺の手に、その小さな手を重ねてきた。
「雅紀が触ると…気持ちいいもん…」
黒目がちな瞳を伏せると、キスをねだる。
「雅紀が…ほしい…」
「朽葉…」
重ねた手が、朽葉の中心に導かれる。
下着も付けていないそこはもう熱く滾っていた。
無言で握り込むと、小さな悲鳴が聞こえてまた朽葉の身体が揺れる。
「一回イかせてやるから、今日はそれで我慢しろ…」
「嫌っ…抱いて…」
また俺の首に腕を回しかけると、ぎゅっと抱きついてきた。
「ちゃんと洗ったから…お願い…」
こう言われると…弱い…
朽葉は、こんな仕事をしてる自分を汚いと思ってる。
自ら望んで入った世界ではない。
朽葉の娑婆の家族は、借金を抱えて一家心中寸前だった。
朽葉がこんな特殊な世界で身体を売ることを思い立ったのは、全て家族のためで…
なのに、朽葉はとても才能があった。
その見た目…そしてどうやったら男が歓ぶのかを、朽葉は本能で知っていたのだ。
わたつみ楼にきて、三年もしないでおいらんに登りつめたのは、朽葉しかいない。