第67章 プロローグ(仮:めりくり)
忍者が向かいのソファに腰掛けると、呆気にとられていた執事が立ち直った。
「…ごほん…それでは、御前よりお言葉がございます」
執事は御前に向かって頭を下げた。
「皆、ご苦労。それで、どうやって私を楽しませてくれるんだ?」
今日ここに集まった者は、この御前と呼ばれる貴族に願いを叶えて貰うために来ていた。
ただし、ただで叶える訳がない。
それぞれが御前を楽しませることができたら、願いをひとつ叶えるというのだ。
「せっかくのクリスマスなのに、女性とディナーに行くことも叶わない…それなりの楽しみ方をさせてもらえるんだろうな?」
御前は薄笑いを浮かべると、紅茶のカップに手を伸ばした。
ソーサーを持ちながら紅茶を啜ると、執事を一瞥した。
「御前…お気持ちはわかりますが、少々火遊びが過ぎました。どうか、今宵はここで大人しくお過ごしくださいませ」
事前に得た情報によると、御前は女性と遊び回りすぎて、どうやら修羅場を迎えてしまったらしい。
今日はクリスマス・イブ…そんな修羅場の中、さらなる修羅場が予想される。
だから、今日という日は監禁されているも同然なのだ。
そんな中だが、せめて御前を楽しませようと今日の企画が持ち上がったということだ。