第67章 プロローグ(仮:めりくり)
「フォートナム・メイソンのロイヤルブレンドでございます」
…よくわからない…
「鳴海様?」
「あっ…はい、すいません。ありがとうございます」
メイドは次々に他の男たちの前にカップを置いていく。
それぞれ手にとって、紅茶を啜り始めた。
誰もが無言だった。
ただ、薪の爆ぜる音と紅茶を啜る音が部屋に響く。
暫くすると、執事が懐から懐中時計を取り出し時刻を確認した。
「御前がお出ましでございます」
執事が扉を開けた。
皆、一斉にカップをテーブルに置くと立ち上がった。
「やあ。皆さんお揃いですね」
そう言いながら入ってきたのは、”御前”と呼ばれた男。
「ああ、そのままで結構」
そう言って部屋の奥の一段高くなっている場所に上がった。
そこには天蓋が付いていて、上から薄い布が垂れ下がっている。
その中央に置いてある、絹張りのベージュの一人がけのソファに深々と腰を下ろした。
メイドが御前の座る横においてある小さなテーブルに紅茶の入ったカップを置いた。
それを合図に長身の執事が、前に立った。
「それでは皆様、自己紹介をお願い致します」
そう言って頭を下げると、御前は頷いた。