第66章 Thousand of…LOVE
中にはシンプルなプラチナのリング。
指でつまむと、俺の左手を取った。
「お誕生日、おめでとう…智くん…」
するりと薬指に指輪が嵌った。
「翔ちゃん…のは?」
今まで俺たちはこうやってリングを贈り合うってこともなくて…
っていうか、そんな余裕もなかったし、そこまで頭が回ってなかった…
「俺のは…そうだな。誕生日に、智くんから頂戴?」
「うっ…うんっ…わかったっ!」
なんだかマリッジリングみたい…
「男同士だからさ…どうかと思ったんだけど…」
「ん…?」
「これは、智くんが俺のものだっていう証拠だからね?」
「うん…」
「ずっと付けててとは言わないから、一生…持ってて欲しいな…」
「翔ちゃん…」
「一生…そばにいてくれる?」
「あたりまえじゃん…」
今度は俺から抱きついた。
「指輪…ありがとう…」
「うん…」
「すっごく、嬉しい…」
「良かった…」
出会った時は…
生活に疲れて、人生に疲れて…
子どもたちを抱えて絶望しかなかった。
親も兄弟も無くて、嫁も俺と似たり寄ったりの境遇で嫁の実家には頼れなかった。
そんな俺に手を差し伸べてくれたのは、翔ちゃんだった。