第66章 Thousand of…LOVE
「でもぉ…」
「智くんは一緒に暮らすようになってから、慣れない料理だって家事だってすっごく上手になったよ。それに俺が仕事忙しくなったら、子どもたちの世話や学校関係、全部やってくれてるじゃん…自分だって仕事抱えてるのに」
「そんなの当然だもん…」
「だからね…それを当然のように頑張る智くんが、皆、凄いなって思ってるの」
トントンと俺の背中を叩く。
「人間ってね、毎日同じように過ごしていると、ありがたいなってことも当然になってくるのね。だから日頃感謝を表したりするのも忘れちゃう。誕生日とか記念日ってさ…それを見直すいいチャンスだと思うんだ」
身体を離すと、俺のこと覗き込んて笑った。
「いつもありがとう。お母さんの役目してくれて…凄く助かってる。だから…今日は恋人に戻ろ?智くん…」
「翔ちゃん…」
「そりゃ、恋人のときも甘い時間をたっぷりって訳には行かなかったけどさ…だから、こうやって皆が作ってくれた時間を楽しもうよ、ね?」
またティッシュで俺の顔を拭くと、ジャケットのポケットに手を突っ込んだ。
取り出したのは、リングケースだった。
俺をみると少し笑ってそれを開いた。