第66章 Thousand of…LOVE
「あー…あの、ホテルの予約さ。実はコネがあって、来週末に変更してもらえたから…その、来週行こうね?」
照れた翔ちゃんが俺の顔を見た瞬間、焦った顔になった。
「なっ…何で泣いてるの!?」
「ふえぇぇ…」
「智くんっ…」
慌てて手を引っ張ってガレージの車の助手席に押し込まれた。
運転席に翔ちゃんが座ると、後部座席にあるティッシュの箱を取って俺の顔を拭きまくった。
「智くん…」
「ごっ…ごべんざさいっ…」
「なんで謝るの…」
「おで、こんななのに…こんな…」
「何いってんの…」
ああ…鼻水垂れてきた…
「こんな…いい加減だし空気読めないし頭悪いのに…こんなにしてもらって…」
「ばかだなあ…」
ぎゅうっと翔ちゃんが抱きしめてくれた。
「できること、できないことなんてあって当たり前で。一緒に生きているからそれを支え合えるんでしょう?そう言ったの、智くんだよ?」
……そんなわかりやすくは言ってない……
「それに、智くんは凄く頑張ってる。だから皆、誕生日に智くんを喜ばせようと思って頑張ったんだよ?」
「そんな頑張ってないもん…」
くすっと翔ちゃんは笑った。
「智くんが頑張ってないっていうんなら、世の中殆どの人が頑張ってないってことになるよ…」