第66章 Thousand of…LOVE
「智くん…あのね…」
「なんだよっ…」
「気を使ってくれてるんだと思うよ?」
「え…?」
子どもたちの顔を見ると、ニヤニヤしてる。
「今日、とうちゃんの誕生日じゃん!」
「そだよ!だから、デートしてきなよ!」
「昨日は俺のせいでごめんね?昼飯も夕飯も俺たちでなんとかするから、行ってきて?」
翔ちゃんが苦笑いして、子どもたちの頭を撫で回した。
「ありがとな。じゃあ舞おばさん呼ぼうか…」
「とうさん、舞おねえさんて言わないとぶっ殺されるよ?」
潤にやりこめられて翔ちゃんは爆笑しながら、電話を始めた。
俺は子どもたちに寝室に押し込められた。
「ほら!おしゃれしてね!」
「久しぶりのデートでしょ?」
「らぶらぶしてきなよ~?」
ませた事を言う和也にゲンコツを食らわせたけど、いつもよりちょっときれいめの格好をしたのは内緒だ。
着替えた翔ちゃんと家を出たのは、それから一時間後だった。
急いで来てくれた舞ちゃんはもうエプロンを付けてる。
一昨年結婚したばかりだから、まだ主婦には見えなかったけど、ずっと子どもたちの面倒を見てくれてるからエプロン姿は板についてた。
なんか昨日、翔ちゃんが断りの連絡をした時に今日来てもらうかもって言ってあったらしい。
手回しのいい旦那さんですよ…もう…
「夕飯前には帰ってくるね」
「え?ゆっくりしてきなよ?」
舞ちゃんは翔ちゃんによく似たどんぐりみたいな目を向けた。