第66章 Thousand of…LOVE
だんだん和也の泣き声が大きくなって。
泣いてるせいで熱くなる体温を感じながら、ずっと抱きしめていた。
和也には亡くなった嫁の記憶はあまりない。
だからこそ母親というものに対して強烈な憧れがあって…
潤のことずっと羨ましいと思っているのはわかってた。
だからこそ、理解できないししたくないんだろう。
だからこそ……潤の寂しさが理解できるんだろう。
「…どうしたの…?」
いつの間にか雅紀が起き上がっていた。
「ん…ちょっとね…ごめんね?起こして…」
けほっと咳をしながらも、雅紀は和也の背中を擦っている。
「どした…和也…?」
和也は俺の胸に顔を埋めたまま、いやいやと頭を振る。
「雅紀。ご飯持ってきたから…食べちゃって?」
「あ、うん…」
そうは言われても、弟がこんだけ泣いてたら食べにくいよな…
「ごめんね…今、リビングで翔ちゃんと潤が話しててさ…」
「なんかあったの…?」
「うん…」
雑炊を食べさせながら、かいつまんで話した。
もう15歳だから…ある程度は理解できると思うけど、やっぱり潤の母親のことはちゃんと話すことはできなかった。
「そっかあ…」
雅紀までちょっと泣きそうになってる。