第66章 Thousand of…LOVE
全ての女性が、子供を産んだからと言って母親になるわけじゃない。
翔ちゃんと付き合うようになってから、そういう女性も居るんだって初めて知った。
亡くなった俺の嫁は普通に母親してたし、うちの両親もごく普通の親だったと思うし…
そういう事があるなんてこと、俺は思いもよらなかった。
潤を産んですぐに産休から仕事に復帰した元奥さんは、復帰してすぐに担当した仕事が高評価で、海外の大きなプロジェクトの一員に抜擢された。
それも現地の重要ポスト。
元奥さんはどうしても行きたいと言ったんだって。
まだ乳飲み子の潤を残して…
翔ちゃんは実家と相談して、潤を養育することに決めて離婚した。
潤のことはあなたに任せると放り投げられた形になったからだ。
息子のことを一切考えていない態度に、翔ちゃんは離婚を決心したんだそうだ。
”あいつにとっての結婚はただのステイタスだったんだろうな…”
翔ちゃんが呟いた言葉を思い出す。
「俺…雅にいにご飯持ってく」
和也が立ち上がった。
「和也…」
目が真っ赤になってて…
「待って。一緒に行こう?」
土鍋から雅紀の分の雑炊を取り分けると、トレイに載せて二人で部屋を出た。
ずずっと鼻を鳴らして和也は後ろについてくる。
客間に入ると、雅紀はすうすう寝息を立てて眠っていた。
畳の上にトレイを置くと、和也を膝の上に座らせた。
ぎゅうっと抱っこすると、和也はしがみついてきた。