第66章 Thousand of…LOVE
「これならとうさんとかとうちゃんと鉢合わせもしないし…だから、母さんに来てって言った」
「そうか…」
潤の母親は、そう遠くない地域で一人暮らしをしてるって聞いてる。
だから、潤とも月に一回は面会している。
それ以外は主に電話で交流を持っていた。
潤は俯いて膝の上でぎゅっと手を握った。
「でも来ないって…」
「…理由は言っていたか?」
またぎゅっと潤は唇を噛み締めた。
「仕事…だって…」
深く翔ちゃんがため息を吐いた。
「…まあ、そうだろうな…」
「……なんで…?なんで母さんは来てくれないの?」
「潤…」
「俺のこと、かわいくないの!?」
突然、爆発したように潤が泣き出した。
「なんで俺のこと産んだの!?ねえっ…」
翔ちゃんは何も答えずに潤を抱き寄せた。
「どうして離婚なんかしたんだよっ…なんで母さんはっ…」
握りこぶしで翔ちゃんの胸を叩きながら、潤は尚も泣いてる。
「潤…」
翔ちゃんは何も言えず、苦しそうな表情でただ潤を抱きしめていた。
言えないんだろうな…
翔ちゃんと元奥さんが離婚した理由。
それは元奥さんが仕事を選んだからだ。