第65章 仄暗い奈落の底から -prequel-
それから一年の時が過ぎた。
二十代も半ばになった彼らはそれぞれの仕事も忙しくなって、5人で集うことも少なくなっていた。
でも、個別での交流は続いている。
「あ、ねえ、雅紀…」
「なんだよ」
相葉は取引先の部長の子息のためにゲームを選びに、二宮の店を訪れていた。
遅い時間だったから、店先には大野の姿もあった。
「最近…翔ちゃんに会った?」
ぎくりとする思いで、相葉は二人を見た。
「俺たち、全然翔ちゃんに会えないんだけどさ…電話してもすぐ切られるし…」
「そうだよな…メールも返事こないしな…」
大野はゆったりと相葉を見ると、少し寂しそうに笑う。
「俺たち…嫌われたかな…」
「い、いや…だって、俺達もなかなか会えないんだもん…」
「え?そうなの?」
「ちょっとね。会社の資金繰りのことでさ相談に乗ってもらうのに、無理やり時間作ってもらってるくらいでさ…忙しいみたいだよ?」
「そうなんだ…凄いね、翔くん」
「うん。さすがだよね」
大野と二宮は目を合わせて微笑みあった。
彼らが同性であろうと、この二人の仲睦まじさには温かいものがある。
相葉はこの一年、それを複雑な気持ちで眺めていた。
櫻井の気持ちを知ってしまったから。