第65章 仄暗い奈落の底から -prequel-
「智くんとニノ…上手く行ってる…?」
「ああ…そうなんじゃないの…?和也の店が終わるまで、智がゲーム屋に入り浸ってるし…」
「晩飯は毎晩一緒に食ってるって聞いたよ」
「そっか…」
少し、懐かしいような目をして櫻井は笑った。
この前のような薄ら寒い笑いではなかった。
「…お前ら…俺の気持ち、知ってるよな…?」
突然の言葉に、二人は黙り込んだ。
櫻井の大野と二宮に対する気持ち…それは普通の友情とは違うものだと二人は感じてはいた。
「翔ちゃん…」
「知ってたろ…?雅紀…」
「うん…」
「わかってんだろ?潤…」
「…なんとなく…」
それきり三人は黙り込んだ。
薄い襖越しに、小さな居酒屋の喧騒が聞こえてくる。
外から大きな笑い声が聞こえた瞬間、相葉は顔を上げた。
「でもっ…翔ちゃんは一体どっちが好きなのさ」
「え?」
「あの二人は…眩しいほどお互いを思ってて…それがよくわかったよ…でも、翔ちゃんはどっちが好きなんだよ」
「俺も…それがよくわかんなかった…」
相葉と松本が言うと、櫻井は破顔した。
「どっちも、欲しい」
グラスを握ると、また飲み干した。
「え…ちょっと…どういう事…?」