第65章 仄暗い奈落の底から -prequel-
「ちょっと…翔ちゃんどうしちゃったの!?」
遅れてきた二人は櫻井を見て驚いた。
「ごめんね、遅くなって…子どもたちが帰らなくてさ…」
「いいから、飲めよ」
櫻井に無理やりビールを注文され、特大のジョッキを前に大野と二宮は少し怯んだような表情をしている。
松本と相葉はそれを複雑そうな表情で見ている。
「カンパイ…お二人さん…」
目をギラつかせながら、櫻井がジョッキを合わせた。
「ああ…乾杯…」
「乾杯…」
それから数ヶ月後、相葉と松本は櫻井に呼び出された。
商店街の外れにある居酒屋の小さな座敷だった。
入り口は一段高くなっていて、中に入ると櫻井は襖を閉めてしまった。
「悪いな呼び出して」
「いや、いいんだけど…大丈夫?翔…」
「なにがだよ?」
この前とは打って変わって、櫻井の表情は明るい。
いつものように二人の会社の話を聞いてはよく笑った。
酒も進んで、相葉も松本も少し安心した頃、櫻井は切り出した。
「教えてくれないか」
改まった様子に、二人は少しだけ嫌な予感がしていた。
櫻井がこのように話してくる時は、厄介な話なことが多かったからだ。
「な…なんだよ…怖いな…」
ちらりと松本を伺った相葉の目には、同じように戸惑ったような顔をした松本が映った。