第65章 仄暗い奈落の底から -prequel-
「え…翔、知らなかったの…?」
「知らなかった…」
「いや、だって…あの二人、随分前から…」
「いつから!?」
松本に食いつくような勢いで櫻井は身を乗り出す。
「いつからなんだよっ…」
「翔…落ち着けよ…」
「言えよ、潤」
櫻井の剣幕に、二人は目を合わせた。
「いや…別に俺達だって報告を受けたわけじゃないけどさ…」
松本が語るには、大野と二宮は学生の頃から思い合っていて…
ただし、彼らは男同士だ。
幼馴染である彼らは前に進むことができないでいたが、お互いに大学を出て家業を継いだ今、どうやら思いを遂げることができたようだった。
そんな二人を知る者は、やっとその時がきたかと胸をなでおろす思いだった。
それほど、二人の思いは一途で純粋なものだった。
男同士であることを忘れるほど…
「でも…見ててわかるっていうか…だから、翔もてっきりわかってんのかと思ってた…」
松本が櫻井の顔を伺うように見ると、その表情は陰鬱さを増していた。
「翔…?どうしたんだよ…それが一体…」
突然、櫻井はグラスのビールを飲み干した。
「おかわり」
「え?ちょっと…そんな一気に煽って大丈夫なの?」
相葉の問を無視して、櫻井は店員にビールを頼む。
「お前らも飲む?」
「あ、ああ…」
それからも、櫻井はどんどん飲んで…
大野と二宮が来る頃には、深酒になろうとしていた。