第63章 reflection -fromあなた-
「いててて…」
運動は、得意な方じゃない。
いや、やれるけどやらない。
…ごめん。ホントは、ちょっと鈍い…
「足、捻った?」
「そうみたい…」
後から年上だと知るけど、この時はてっきり年下だと思ってて。
いつもだったら初めて喋る人には敬語を使うんだけど、この時はそんなこと忘れてた。
さすがに階段で立ち止まることはできなくて、智くんに引っ張られてなんとか上まで昇ることができた。
「ありがとう。助かった…」
「いや…いいけど、歩けるの?」
「ん…大丈夫」
そう言ってそろりと右足をついてみたけど、痛みが走って顔が歪んだ。
「病院行く?」
「いや…」
あんまり痛くて、動きたくなかった。
智くんはちょっと黙ってたけど、すぐに絵の具でペイントしてあるGパンで手をゴシゴシと擦った。
「ほら」
「え?」
手を差し出してきた。
何を意味するのか、咄嗟にわからなくて。
「掴まれよ。家の近くまで付き合ってやるよ」
「えっ…そんな悪いよ」
「いいから…歩けねえだろ?」
「いや、いいって…」
そんな押し問答をしていたら、急に智くんは被っていたキャップを取った。
短くて茶色い髪がとっても色白の顔に似合ってた。
「ごめん。俺、怪しいやつじゃないから。大野っていうんだ。そこのレッドキャップって店で働いてる」
突然、自己紹介を始めた。
レッドキャップとは、オリジナルの帽子を売る店で、俺でも知ってる有名なとこだった。