第63章 reflection -fromあなた-
出会ったのは、駅だった。
ほんと、マンガみたいだったなってよく智くんは言ってたけど、俺もそう思う。
渋谷の駅。
ハチ公の見える入り口から登る階段。
バイト帰り、人の流れに身を任せ階段を登っていると、上からバタバタと音が聞こえて。
嫌な予感がしたんだ。
だけど周りには帰宅ラッシュでたくさん人が居て、引き返すことはできなかった。
予感は的中。
まだ夕方だというのに、酔っぱらいが流れに逆らって階段を駆け下りてきてたんだ。
俺よりも先に階段を登っている人たちは、驚きながらも酔っ払いをなんとか躱してたんだけど、俺はできなかった。
スーツを着た酔っぱらいは何か嫌なことがあったのか、人にぶつかりながら悪態をついてひたすら人を威嚇しながら俺に突進してきた。
「わ…ちょっと、あぶなっ…」
避けようとした瞬間、バランスを崩した。
落ちるっ…
そう思った瞬間、俺の腕を引っ張る強い力を感じた。
「…大丈夫?」
「あ…すんません…」
ダメージの入ったキャップを深々と被って、白いTシャツにこれまたダメージの入ったGパン。
背中にはリュックを背負ってる。
俺と同じくらいの年の男が俺の腕を掴んでた。
それが、智くんだった。