第62章 新・忍びのむに
「わ…わかった。万千代がそう言うなら…」
くいっと顎を上げると、無門と潤之介を見た。
「では、二人に京に町家を与えるゆえ…京の探索の根城にするがよい」
「ありがとうございます!」
潤之介が頭を下げると、無門も頭を下げた。
「…そうか…お主らがのう…」
なんだか家康は感心しているようだった。
「なあ。あの二人ってできてるの?」
岡崎の城をさがった二人は、京に戻るべく足早に歩いている。
「まあ…直政様があのような見てくれゆえな…年若いころから家康様が依怙贔屓ばかりして、やっかまれておるよ…」
「ふうん…家康もやるねえ…」
「でも、直政様もまわりのやっかみに負けぬほど、武功を立てられておるから、最近では表立って騒ぐものもおらぬよ」
「そっか…偉いんだな」
きゅっと編笠のあごひもを締めると、潤之介は空を見上げた。
「さ。明るいうちに岡崎を出てしまおう…これから大変じゃぞ…無門殿」
「うん」
潤之介は無門に手を差し出した。
「家だ!無門殿!」
「おう!家だ!潤之介!」
根無し草の二人に、京に家を持てるなんて贅沢であった。
きゅっと潤之介の手を握ると、無門はわくわくしてきた。