第62章 新・忍びのむに
「良いのか…?」
恐る恐るといった体で潤之介が聞くのを、わざと無門は無視した。
暫く、お堂の中はしんとした。
なんだか顔が赤くなっていたから、無門は潤之介に背中をむけたままだった。
ぎゅっと布団を掴んでいると、背後で潤之介が動き出すのを感じる。
荷物を隅に寄せて、灯明を消してしまった。
今日は月がくっきりと出ている。
薄く開けてあるお堂の木戸の隙間から、青白い光が入っていた。
「入るぞ…無門殿」
「おう…」
背中を向けたままで居ると、布団の中に温かい塊が入ってきた。
そのままゆっくりと潤之介は、背後から無門の身体を抱きしめた。
「やっと…」
「え?」
「やっと触れさせてくれた…」
「な、何言ってんだよ」
ますます潤之介は無門をぎゅっと抱きしめた。
無門は大人しく、されるがままだ。
「無門殿…?」
「なんだよ」
「怒っておるのか…?その…」
「あ?」
「もしかして…翔之進のこと…?」
「はあ?んなわけねえし」
無門自身にも、この感情がなんなのかわからないのだ。
ただ、無性に腹が立つ。
でもなんで腹が立っているのかは、よくわからなかった。
「…怒っておるのだろう…もうそれしか考えられない…」
「ち、違うわ!」