第62章 新・忍びのむに
「何をそのように拗ねておるのだ」
いい加減潤之介も怒ってきた。
「拗ねてねえし!」
「じゃあなんだというのだ。安土からずーっとその調子ではないか!俺がなにかしたのか!?」
「おまえが笑わないからだろ!?」
「はあ!?」
翔之進と会ってから、明らかに潤之介は落ち込んでいた。
それがなぜだか無門には腹立たしかった。
「笑えばよいのか!笑えば!」
無理やりに潤之介は大仰な笑い顔を作る。
「これでどうだ!」
やたらえばってふんぞり返るのを、無門は突き飛ばした。
「違うだろうが!心から笑え!」
「な、なんだというのだ!」
無門にもなんだかわからない。
道中の鬱憤が一遍に噴き出して止まらないのだ。
「そんなに翔之進とやらがいいのなら、攫って奪ってしまえ!」
思わず無門は叫んでいた。
「…なんで翔之進の話が出るのだ…」
潤之介の顔に、傷ついた表情が浮かんだ。
「し…知らねえし!」
ついてしまった勢いは止まらない。
でもこれ以上潤之介に当たる事もできない。
無門は背中を向けて山に駆け出した。
「翔之進の妻は…妹なんだ…」
ぽつりと呟いた声が聞こえた。
「え…?」
思わず振り向いた無門に、潤之介はさみしげに笑った。