第62章 新・忍びのむに
「もうそろそろ出立するか…」
安土での滞在が十日を過ぎた頃、出立することになった。
次は越前の柴田の城下へ向かう。
柴田は織田家の中でも筆頭の家来で、発言力もある。
まずはここから調べようと潤之介と無門は話し合った。
寺を綺麗に掃除をして、村の者に返すときも愛想よく潤之介は振る舞った。
またここにくることもあるだろうからと。
伊賀にはない方法で、潤之介は土地に怪しまれずに馴染む方法を身につけているようだった。
「なあ、そういうの雑賀じゃ普通なの?」
「ん?」
「そうやって、無闇に顔を晒したら覚えられるだろう」
「ああ…俺は顔が濃いゆえ、隠しても無駄じゃからの」
「なるほど…」
凄く納得していると、潤之介の歩みが止まった。
「どうした?」
潤之介は安土の城下を行軍している鉄砲衆を眺めている。
「…もしかして、雑賀の衆か?」
「ああ…あの種子島は雑賀の者だ…」
種子島とは、鉄砲のことを指す。
最初に伝来したのが種子島だからこの名前がついた。
雑賀の衆はこの鉄砲の技術に長けていた。
信長は鉄砲に早いうちから目をつけ、雑賀からも人を雇っていた。
雑賀では織田に雇われるものと、織田の敵対勢力に加担するものとで分かれていざこざが絶えないということだった。