第62章 新・忍びのむに
「かわいいのう…無門殿は…」
なにを世迷い言を言っているんだと思いながらも、離れる気にならない。
「あほか…」
憎まれ口は叩いてはみるものの、いつもの勢いもない。
「阿呆でよい…」
またぎゅっと潤之介の腕に力が入って無門を更に抱き寄せる。
まるで自分が小さな子供になったようだった。
そのうち潤之介の手が、無門の背中をとんとんと叩く。
まるで赤子をあやすように。
潤之介のぬくもりと、その拍子の心地よさに無門がとろとろと眠りに落ちそうになると、ぎゅっと潤之介の着物を掴んだ。
「どうした?眠れぬか?」
心地よすぎて、寝るのが勿体無い。
まだ起きていたかった。
まだ潤之介の体温を感じていたかった。
「…なんでもない…」
「…そうか…」
潤之介のぽってりとした唇が、無門の額に触れた。
そこから伝わる熱が、最後の駄目押しをした。
そのまま無門は眠りに落ちていった。
それから、毎日二人は同じ布団で眠るようになった。
布団なぞ、もう一組借りて来ればいいのだが、なぜだか無門はそうしなかった。
また、潤之介もそんな無門になにもいうわけでもなく、毎晩当然のように同じ布団で眠った。
「無門殿はかわいいのう…」
そう言うことも忘れずに。