第62章 新・忍びのむに
「そんなわけには参らぬ」
「でも、あんた…」
「いいから…まだ熱が下がりきっておらぬ」
起こしかけた半身を無理やり布団に押し付けられた。
「あんたが熱出したらどうするんだよ…」
「俺は大丈夫だ、気にするな」
そういうと、胸の上に手を置き子供のように寝かしつけようとする。
「おい…ガキじゃねえんだぞ俺は…」
「まあまあ、良いではないか…」
ふふっと笑うと、潤之介は目を閉じた。
「無門殿の身体は、ひとつしかないゆえな…」
なぜだか、その言葉が響いた。
「…俺の…身体…?」
「そうだ。無門殿のこの世にたった一つの身体ではないか…大事にせねばなるまい…」
そのようなこと、言われるのは初めてだった。
「なんで…大事にしなきゃいけないんだよ…」
今まで、散々命を粗末にしてきた。
その重さなど考えようともできなかった。
お国がその大切さを教えてくれた。
だけど、自分の命もお国の命ほど重いものなのか、無門にはわからなかった。
「無門殿はこの世にひとりではないか。だから…」
「別に俺なんか居なくても世の中誰も困りゃしないだろ!?」
思わず飛び起きた。
「無門殿…?」