第62章 新・忍びのむに
「熱が高いな…」
ひとりごちると、潤之介は竹の筒を取り出した。
小さな印籠から丸薬を取り出すと、口に含んだ。
そのまま筒から水を口に含むと、無門の唇をこじ開けた。
「ふがっ!?」
突然、無門の口に水と薬が流れ込んできた。
潤之介が口移しをしているのだ。
流し込むと、無門の口に手を当てて潤之介は微笑んだ。
「これは我が家に伝わる熱冷ましだ。安心して飲まれよ」
なんだかわからないけど、飲み込むしかなかった。
ごくりと音を立てて飲み込むと、潤之介はほっとしたようだった。
携帯用の灯明ではあまり明るくはないが、ぼんやりと潤之介の姿が見えた。
「毒を飲む稽古をしてるから…効かねえぞ…俺には…」
「ああ…そうだったのか…まあ、わからぬではないか」
そっと無門の額を手ぬぐいで拭っていった。
「気の持ちようだ」
「……」
久しぶりの発熱に、さすがの無門も敵わない。
返事をすることも億劫になって目を閉じた。
夜中目が覚めたときには、お堂の中は真っ暗になっていた。
傍らには、潤之介が板敷きで寝そべっている。
「…おい…」
「おお…気が付かれたか、どうじゃ?」
「いや…俺のことはいいから、あんた布団で寝ろよ」