第62章 新・忍びのむに
お堂に戻ると、今日の成果を報告しあった。
何を聞いていいかわからなかったものの、織田麾下の武将はやはり安土に集まってくるので、噂話を無門は拾ってきていた。
「おお…そのようなことで良いのです」
潤之介が言うから、無門は安心した。
もう真っ暗だったが、二人は夜目が利くから明かりはつけていなかった。
しかし潤之介は今日の成果を書付にすると言って、携帯用の灯明を取り出し明かりをつけた。
そのまま書付を取り出し、さらさらと筆を走らせている。
やることもなくなった無門は、そのまま板敷きの床に寝そべってそれを見ていたが、いつの間にか眠ってしまったようだった。
「…無門殿…?無門殿…」
潤之介の声が聞こえるが、返事をするのが億劫だった。
「まずいな…熱を出している…」
ふんわりと身体を持ち上げられて、布団に寝かされたのがわかった。
「河原で寝てしまったからか…」
ぼそりという潤之介の声に納得した。
さっき、裸のまま寝こけてしまったから、風邪を引いたのだ。
めったにない事だから、だるくてしょうがない。
目を開けるのも億劫で、無門はされるがままだった。
布団に寝かされると、潤之介の冷たい手が額に乗せられた。
気持ちが良かった。