第1章 雪の華 -KAZUNARI-
「お前、なんていう名前?」
「…かずなり…」
「そっか。お前、今日から俺のコブンね!」
「子分…?」
小さな潤さんは、俺のこと一番目の子分にしてくれたんだ。
「嫌だよ…子分なんて…」
「なんでだよ!」
そこに父親が割って入った。
「和也っ…坊っちゃんになんて口きくんだっ…!」
そう言って俺を平手で殴った。
身体が吹っ飛んでいって、工場のトタンの壁にぶち当たった。
「とうさん…」
尚も父親は俺を張り倒そうとこちらに向かってくる。
とっさに顔をかばった、その瞬間―
「なにするんだーっ!」
潤さんの叫び声が聞こえた。
目を開けたら、潤さんが父親に殴りかかってた。
「和也はおれの子分だ!俺のものだ!殴っていいのは俺だけなんだーっ!」
殴る力に威力はない。
だけど、潤さんは全力で父親に立ち向かってくれた。
その時の感動を、どう言えばいいのか…
この時俺は、父親に捨てられた。
松本組に売られたのだ。
それは父親から言い含められていた。
経営していた工場が立ちゆかなくなり、一家は離散した。
母親も蒸発して、行方がわからない。
俺だけが父親の元に残ったが、父親にとって俺は足手まといでしかなかったのだ。