第58章 Thousand of …
握っていた手を引き寄せられた。
ぎゅっと抱きしめられると、汗の匂いとあなたの匂いが漂ってくる。
「ごめんね…?今の部署って、凄く集中力使うところでさ…上の空になっててごめん…」
「ううん…だって、それは仕事なんだからさ…わかってるよ?」
「でも…ごめん…前みたいに時間取れなくて…」
「いいんだってば…!一緒にいられるだけでいいの!ただ…」
「ただ?」
ぎゅっとシャツを握りしめた。
「身体だけ…気をつけて?」
最近、仕事や家事が終わると、床で行き倒れてたりするから、心配でならなくて…
眠すぎて、ソファにもたどり着けず床で寝ちゃうんだって…
俺も在宅で仕事してるから、しょっちゅうそんなあなたをサポートすることができなくて。
とても、もどかしいんだ…
「疲れてたら、言って?俺、今余裕あるんだからさ…」
「智くん…」
「納期だってまだ先だし、今はそんな大きな案件抱えてないんだからさ…頼ってよ。俺に…」
「ん…ごめんね…そんなに心配させてたんだね…」
「心配にもなるよ!あんなところで行き倒れてて…」
「ごめん…」
ぎゅううって俺を抱きしめる腕に力が入る。
「そう言って貰えるだけで…力出る…」